治らない痴呆の症状には、記憶障害や認知障害を中心とした中核症状と、さまざまな精神症状からくる随伴症状があります。中核症状とは、たった今したことを忘れてしまったり、自分が今どこにいるのかわからず、道に迷うといった痴呆の中心的な症状で、随伴症状とは、このような痴呆の中核症状を持った方が周りの方々との人間関係の中で苦しんだり、悩んだり、時には怒ったりする、感情的なもつれが背景となり起こる問題行動を指します。両者のうち、中核症状に対しては症状の進行を抑制する薬剤と、リハビリテーション等によって、残っている知的機能をなるべく保つことが治療の中心となります。
一方、随伴症状は治療薬によってある程度症状を軽くする事ができます。例えば、睡眠障害の場合、最近は、様々な睡眠導入剤があり、これらを少量使うことによって十分解決します。また、自分で大切にしまった財布の場所を忘れて「財布が盗まれた」という、もの盗られ妄想や、夜眠らずに興奮して、つじつまが合わないことを話したり、外ヘ飛び出そうとする夜間せん妄には抗精神病薬を、落ち込んだり悲しんだりするうつ状態には、抗うつ薬を投与することによって、かなり症状が軽快します。ご家族や介護されている方を悩ませるのは主に随伴症状であると思います。
このように、治らない痴呆と診断された場合でも、適切な治療をすることで、これらの症状は軽くすることができるのです。専門の病院など訪ねて、悩みを相談してみてはいかがでしょう。