今回からは消化器(食道から肛門まで)の癌を中心にシリーズでお話しします。
まずは食道癌から、食道はのどの奥から心臓の背側を通り胃につながる細長い直径が約2cm長さが約25cmの管で食べ物の通り道です。食道癌は地域格差があり鹿屋を含め南九州は多発地域に入り男女比は5:1で55才以上の男性に多く発生します。前回話しましたが癌は遺伝子の病気で、その遺伝子の異常を引き起こす誘因として食道癌の場合には飲酒とタバコ、辛い食べ物、熱い食べ物、冷たい食べ物、こげた食べ物などが上げられます。
消化器の癌はその殆どが粘膜から発生しますがどの臓器の癌も初期には殆ど症状はなく早期食道癌は検診や人間ドックなどの内視鏡検査で偶然に見つかることが殆どです。進行してくると食べ物のつかえ感やしみる感じがあり、更に進行すると胸痛や通過障害がおこり体重減少が見られ、時には頸部の腫瘤として発見されることもあります。治療の第一選択は手術ですが化学療法や放射線療法を組み合わせます。手術は食道を切除し胃もしくは大腸を用いて再建するため6~8時間もかかり胸部と腹部、さらに頸部の3カ所を切開する必要があり手術侵襲が大きく高齢者、心機能、肺機能が悪いと手術の適応にならない場合もあります。最近は胸腔鏡を用いて手術侵襲を軽減した術式が開発され早期食道癌に対しては内視鏡下切除術が可能な場合もあります。先にも述べましたが鹿屋は食道癌の多発地域に含まれますので55才以上で飲酒、喫煙する男性は年1回の内視鏡検査を受けることをおすすめします。
もし食道癌と診断されたら癌の広がりや進行度を検査すると同時に年齢、合併症の有無を調べ内視鏡治療の適応はないのか、手術単独かもしくは放射線療法、化学療法を併用するかそれぞれの治療法のメリット、デメリットを含めて考慮しそれぞれの患者さんが自分の納得した治療法を選択する必要があります。これは食道癌に限った事ではなく癌という病気を理解し意思をきちんと医療サイドに伝え、相談することが大切です。