健康コラム

癌は遺伝子の病気

(遺伝子の病気と言っても親から子供に移る遺伝とは違います。)

なぜ癌が出来るのですか?何時出来たのですか?患者さんや家族の方に良く聞かれる質問です。はっきりと答えることは出来ませんが癌が出来るメカニズムが少しずつ解明されてきています。人の体は60兆個の細胞から構成され一生のうちに1016回細胞分裂を繰り返し古い細胞から新しい細胞に生まれ変わり成長します。この細胞分裂をコントロールしているのが癌遺伝子です。例えは熱傷をすると皮膚が再生し傷が治ります。皮膚の細胞分裂を促し再生されるのが癌増殖遺伝子で傷が治りもう再生しなくていいいですとブレーキをかけるのが癌抑制遺伝子です。何らかの要因でこの癌増殖遺伝子が増えすぎたり逆に癌抑制遺伝子が働かなくなると細胞は永遠に増え続けて癌になってしまいます。これとは別に細胞分裂の際にはDNA(遺伝子)が複製され2つに分かれますが生体内では絶えずこの複製の段階でミス(突然変異)がおきています。しかしミスを修復する遺伝子群が見張っていてミスを元に戻しています。この修復する遺伝子群に何らかの原因で異常があると遺伝子の突然変異が増えてしまい細胞分裂のコントロールを失い癌になってしまいます。

1回のミスで癌になるのではなくミスが繰り返され蓄積すると癌化がおこります。おおよその数値ですが1個のガン細胞が30回細胞分裂を繰り返し1g(1cm)の固まりになるのに平均10年かかりさらに3~4年で10回分裂し1kgになります。すなわち現時点で私たちが治療している癌は10年以上前に発生していたと考えられています。ガン細胞の増殖にはウイルスやタバコなど発癌物質として多くの外的要因が関与します。癌予防の12カ条にはタバコ、深酒以外にも塩分、脂質の取りすぎや焦げた部分を食べないこと、バランスのとれた食事と適量のビタミンと繊維質のものを摂ること、過労を避け体を清潔にすることを勧めています。癌になり手術で治った人では遺伝子的要因があるため他の癌になる確率は高く再発だけではなく次の癌を早期に発見するためにも手術の後の定期検査と上記12カ条が癌予防の第1歩です。