健康コラム

PET検査(Positron Emission Tomography)

最近テレビ、新聞で報道されている新しい癌の検査方法で2004年に日本核医学会からPETによるがん検診のガイドラインが出されました。人間の細胞はブドウ糖をエネルギー源として使っていますが癌細胞は正常細胞に比べて活動性が高く、より多くのエネルギー、ブドウ糖を必要とします。PETはこの作用を利用した検査方法です。放射線で印をつけたブドウ糖(FDG)を注射し癌組織に取り込まれたブドウ糖から出る放射線を画像化する事により癌細胞を発見することが出来ます。
PETの利点は1回で全身の検査が出来ること、またFDGを静脈注射するだけですので侵襲や副作用が少なく、放射線の被曝量も人体にほとんど影響がありません。

癌組織が小さすぎるとFDGの集積が低く検出されにくく現時点では10mm以上あれば検出可能とされます。この様に書くと1回の検査ですべての癌がわかる夢のような検査と受け取られますが、残念ながら弱点もあります。先ずブドウ糖を使いますので糖尿病など血糖値が高いと難しくなります。また投与されたFDGは尿から排泄されますので腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌などの泌尿器系の癌の検出には向いていません。

ブドウ糖の取り込みが低い胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌などもFDGが集積せず検出には向いていません。大腸癌はPET検査の良い適応で、大腸内視鏡検査の様に下剤処置の必要もなく簡便で侵襲もありませんが大腸には生理的にブドウ糖が集積するため偽陽性率が高いことが問題です。PETが最も優れている点は通常の画像診断(CT、MRI、超音波)で発見された腫瘍の良悪性の鑑別診断、術前の癌病巣の広がり、術後の再発の検査、抗ガン剤や放射線療法の効果判定などがあります。
現時点では食道癌、胃癌、大腸癌など消化器癌に関しては早期発見のための内視鏡検査にまさる検査方法はありませんが内視鏡検査の出来ない方や高齢者などには侵襲が少なく有用と考えられ、今後FDGにかわる薬剤やPET機器の開発により内視鏡に代わる消化管癌の早期診断法となる可能性があります。