健康コラム

血液で癌がわかる?

「毎年血液の検査を受けていたのになぜ癌がわからなかったのですか?」
よく聞かれる質問です。血液の中に認められる癌関連物質を腫瘍マーカーと言います。肝臓癌、胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌など多くの癌にそれぞれ特異的な腫瘍マーカーがあり手術前の検査や術後の定期検査では必ず調べられます。腫瘍マーカーは正常組織内にも認められ、また炎症などの良性疾患でも上昇する場合があり良悪性の鑑別に関して問題があります。また腫瘍マーカーの値はおおむね癌の大きさを反映していると考えられ多くの早期癌ではその陽性率は低く、腫瘍マーカーを癌のスクリーニングに利用することは現時点では難しいと考えられます。(例外として現在鹿屋市の基本健診で検査している前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAはスクリーニング法として確立されています)では腫瘍マーカーはどの様に使われるのでしょうか。

消化器癌の代表的な腫瘍マーカーとしてCEAがあります。先にも述べたように早期胃癌や大腸癌では陽性率は低く術前の診断には利用できませんが進行癌になり癌が大きくなると陽性率が上昇し、さらにリンパ節転移、肝転移などを起こすと高度上昇が認められます。

また再発例の手術前CEA値は非再発例より高く手術前CEAが高い患者さんは再発の高危険群と考えられます。
この様に現時点では腫瘍マーカーは術前診断ではなく再発の危険因子としてまた術後の再発のチェック、再発後の治療効果判定に利用されています。まだ研究段階ですが今年9月に札幌で開かれた日本癌学会では膵臓癌と胃癌の新しい血液診断方法が報告されました。近い将来、新しい腫瘍マーカーが発見され血液で癌の早期診断が出来るようになると考えられます。