この名前を聞いただけで貧血、吐き気、脱毛の言葉が浮かび拒絶反応を起こしてしまわれる方がほとんどだと思います。でもその逆に手術不能や再発癌の患者さんや、その家族は何か治療法はないかと必死に代替療法(アガリクス、霊芝、プロポリス、など)に期待を掛けられます。抗ガン剤による治療は手術後の再発予防と進行癌に対する術前療法、再発もしくは手術不能例に対する治療、症状の改善、延命効果の目的などがあります。確かに抗ガン剤は癌細胞以外にも体の中で細胞分裂の早い造血細胞や消化管細胞、髪の毛の細胞などにも作用しますので貧血や吐き気、脱毛などの副作用が出現しやすいのは事実です。そのため吐き気止めの予防投与や治療中の副作用対策を十分に行いながら治療する必要があります。さらに投与間隔、投与量、組み合わせを変更することで副作用を抑え治療を継続し効果を引き出すことが必要です。
以前は抗ガン剤による治療は入院が主でしたが現在は副作用対策などでほとんどの治療が外来で可能で、注射だけではなく世界でも日本が先行している新しい飲み薬の有効性も確認され抗ガン剤の治療は新しい展開を見せています。また抗ガン剤は確かに非常に高価です、でも代替療法と比べてどうでしょう、代替療法が1ヶ月にどのくらいかかるかは正確には知りませんが有効性が確立している治療にかかる費用はその後の治療効果に伴う生活の改善度、延命効果を考慮すると総合的には安いと考えられないでしょうか。抗ガン剤と代替療法の併用はかまいませんが、ときに代替療法を優先され、先方からモルヒネの使用を止められ十分な治療ができなかったケースがあり家族だけの希望、満足だけで治療法を決定してはならないことを再認識させられた経験があります。
抗ガン剤の治療を受けるには正確な病名と病状の説明が必要です。生存期間を含めた説明をどの時点で何処まで説明するのかなど問題がありますが必要な治療を必要な時期に受ける事が最も患者さんにとって大事であることに変わりはありません。