健康コラム

急性虫垂炎(俗に盲腸)

今回は小児救急の腹痛の中で一番心配される急性虫垂炎のお話です。
右下腹部にあって大腸の始まりの部分の膨らみを盲腸と言います。この盲腸にぶら下がった小指のような突起を虫垂と言い、何らかの原因で炎症、化膿をおこし腫れあがった状態が急性虫垂炎です。何らかの原因と書いたのは、ウイルス、細菌感染、暴飲暴食、アレルギー、下痢、便秘、寄生虫などが原因と考えられていますがはっきりとしていないからです。
虫垂は腸管の一部でその中でもリンパ組織が豊富なため、全身のリンパ組織が発達してくる10歳前後に多く見られ6才以下には比較的少ない病気です。典型的な症状はみぞおちやへその周りの痛みで始まり、食欲不振や吐き気を伴い半日ぐらいで右下腹部に痛みが限局してきます。小児は吐き気、嘔吐や何となく元気がないなどの症状で発症し右下腹痛と発熱を認める場合が多く下痢を伴う場合は少ないようです。
そのため右を下にしてエビのように背中を丸めて横になったり、右下腹部を手で押さえて前かがみで歩く様子がみられます。触診では右下腹部を手で押さえた時や離すときに痛みを訴え、おなかが硬くなります。検査は血液検査、レントゲン、腹部エコー、CTなどを行います。ただし小児のCTは簡単に撮れないため腫れあがった虫垂の7~80%が描出される腹部エコーが簡単で侵襲が少なく手術が必要かどうかの判断に有用です。症状が軽い場合には抗生剤の内服で治療しますが痛みなどの症状が強い場合や腹膜炎の症状を伴うときには手術が必要です。手術は腫れあがった虫垂を切除します。

小児の場合は軽症では3~5日ぐらいの入院ですが腹膜炎を併発していると1週間以上かかることもあります。最後に慢性虫垂炎の話をします。「薬でちらすと慢性化するのですか」とか繰り返すため「慢性虫垂炎ですか」と質問されますが病気として虫垂炎が慢性化するという概念はなく、再発性急性虫垂炎が正しい言い方で、症状が軽くても繰り返す虫垂炎に対しては手術の適応と考えます。