健康コラム

PTSDについて

大阪で児童殺傷事件という大変痛ましい事件が起こりました。亡くなった方々のご冥福を心よりお祈りいたします。そして、事件に遭遇した子供たちに今後起こるかもしれない心の問題がPTSD(心的外傷後ストレス障害)と言われるものです。

これは、1980年アメリカで初めて独立した疾患として提唱されたストレス性の障害です。当時、べトナム戦争で強い恐怖や戦友の死を体験した帰還兵たちが、強いいらだち、注意集中困難、過度の驚愕反応、睡眠障害などの精神障害で悩まされ、社会生活に支障来たして社会問題化していました。このようなトラウマ(心の傷)に起因する精神疾患にPTSDという名がつけられたのです。

その後、同様な症状は児童虐待や性的虐待といった人的災害の被害者や、地震・洪水といった自然災害を体験した人々にもみられる事が明らかとなりました。日本で、この疾患が注目されたのは、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件がきっかけでした。

症状は、第1に再体験いわゆるフラッシュバックです。生々しい記憶が苦痛を伴って何度も何度も思い出させることです。
夜中に突然悪夢として再体験されることもあります。

第2に回避行動です。例えば学校で強い恐怖体験をした人が、その後学校に行けなくなるというものです。

第3に覚醒の亢進です。ベトナム帰還兵の所で述べたような、睡眠障害や易怒性、爆発性、集中困難などがこれにあたります。

この疾病はまず「異常な状況におかれた人の正常な反応」であることを理解することが第1です。そして、緊張からの解放をはかり出来るだけ早期にトラウマに対する「心の手当て」をすることです。この時につらい体験を十分に受け止め支える「心の理解者」が必要であると考えられます。そして理解者(友)と時間をかけて「喪の作業」をして行きます。「喪の作業」を完成できれば「トラウマ」は、心を豊かにする根源にもなるともいわれています。時と友がこの問題を解決する大きな柱です。